住宅ローンが払えない場合はどうなる?NG行動や対処法も詳しく解説

住宅ローンが払えない場合はどうなる?NG行動や対処法も詳しく解説

新型コロナウイルスのまん延や円安など世界情勢の変動で、生活や収入状況に少なからず影響が及んでいます。

それが原因で、住宅ローンの返済が厳しくなる場合や返済ができなくなる場合もあるでしょう。

この記事では、住宅ローンを返済できない場合どうなるか、そうなった場合の対処法、やってはいけない行動について解説します。

【この記事でわかること】

  • 住宅ローンが払えなくなる原因は?
  • 住宅ローンが払えないときの競売とは?
  • 住宅ローンが払えない場合にやってはいけない行動とは?
  • 住宅ローンが払えないときの対処法8選

そもそも住宅ローンが払えない原因とは?

ここからは、住宅ローンが払えなくなる主な原因を5点解説します。

  • 収入の減少
  • 支出の増加
  • 定年後も住宅ローン残債がある
  • 病気や事故など長期的な障害を負ってしまった
  • 返済金額の負担が大きい

住宅ローンが払えなくなるリスクは誰にでもあります。

収入の減少

住宅ローンが払えなくなる大きな原因は、収入の減少です。

新型コロナウイルスやウクライナ侵攻により、さまざまな業界にリストラの波が押し寄せ、それと共に収入が減少する人が増加しました。

住宅金融支援機構』が公開している、「令和2年度リスク管理債権」(※)によると、2020年の貸出金残高総額24兆1,000億のうち、約3.5%にあたる約840億円が破綻及び延滞債権に該当し2019年の倍以上になっています。

住宅ローンは正常に勤務している状態を想定して返済計画を組んでいるため、このように収入の減少は大きな痛手となるでしょう。

※参考:令和2年度リスク管理債権|住宅金融支援機構

支出の増加

支出の増加も、住宅ローンが返済できなくなる大きな原因の1つです。支出が増加する代表的な要因としては以下の4つです。

  • 教育費の増大
  • 円安やウクライナ情勢による物価の上昇
  • 自分の病気や怪我による治療費
  • 両親の介護費用

ほかにも、金利が上昇すれば住宅ローンの返済金額そのものが増加し、支出額が増える原因になります。

定年後も住宅ローン残債がある

定年後も住宅ローン残債があることで、住宅ローンが払えなくなってしまう場合もあります。

独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT)』の2020年3月調査(※)によると、国内の60〜69歳のシニア層(調査総数17,302,654人)のうち借入がある割合は約23%です。

借入がある人のうち住宅ローンを返済している人の割合が52%となり、60〜69歳の約12%がまだ住宅ローンを払っていることになります。

※参考:60代の雇用・生活調査|独立行政法人 労働政策研究・研修機構(JILPT)

病気や事故などの長期的な障害を負ってしまった

長期に及ぶ重大な病気や怪我をすると、その治療期間は収入が途絶えたり減少したりします。その結果、住宅ローンを払えなくなってしまうことがあるでしょう。

もちろんそのための保険に頼ることも可能ですが、保険も際限なく対応してくれるわけではありません。

返済金額の負担が大きい

返済金額の負担が大きいと、住宅ローンが払えなくなるリスクは高いでしょう。一般的に理想的な返済額の目安は手取り収入額の20%といわれており、30%が上限値とされています。

ウッドショックや原油価格の上昇により住宅価格が高騰する一方で、収入が減少したことにより返済比率が30%を超える人が多くなりました。

その場合は住宅ローン以外の支出を極力減らし、可能であれば副業などで収入を増やすことも考えましょう。

住宅ローンが払えない場合は競売にかけられる

住宅ローンが払えなくなりそのまま滞納していると、約1年半で自宅は競売にかけられ、そのあと強制的に退去させられます。具体的な流れは、以下の通りです。

滞納がスタートして3ヶ月:督促状 金融機関に連絡せず3ヶ月滞納が継続すると督促状が届く
3ヶ月後:一括返済要求通知 金融機関より一括返済要求通知が届く
6ヶ月後:競売開始決定通知 裁判所より競売開始決定通知が届く
1年半後:競売実施 競売実施により自宅落札

ここでは、その流れについて以下の3点を補足しながら解説します。

  • 滞納すると一括返済を求められる
  • 競売開始決定通知が届く
  • 退去を命じられる

順番に見ていきましょう。

滞納すると一括返済を求められる

滞納を始めてから3ヶ月が経過すると「期限の利益喪失」の通知が届きます。期限の利益喪失とは、分割払いできる権利を失って一括返済を請求されることです。

それに加えて、個人信用機関にも金融事故として情報登録されてしまいますので、なるべく早く担当の金融機関に連絡してください。

競売決定通知が届く

滞納が半年継続すると裁判所から競売決定通知が届きます。競売が決定すると、裁判所の執行官や不動産鑑定士による自宅の現況調査が始まります。

この時点で、自宅は担保として差し押さえられ近隣にも競売にかけられたことが伝わるので、なるべく前もって任意売却を検討するべきでしょう。

退去を命じられる

滞納がスタートして約1年半で競売が実行され、自宅は落札されます。

落札後の立ち退きを意図的に長引かせると執行官によって強制執行がなされるので、そうなる前に落札者と前向きな退去交渉をしてください。

住宅ローンが払えない場合のNG行動

ここでは、住宅ローンが払えなくなった場合にやってはいけない行動を3点解説します。

  • キャッシングやカードローンで賄う
  • 半年後のボーナスを頼る
  • 夜逃げする

順番に解説していきます。

キャッシングやカードローンで賄う

支払いできない住宅ローンをキャッシングやカードローンに頼って返済しようとするのはNGです。

キャッシングやカードローンの金利は住宅ローンよりも高いため、借入の金額が大きくなるほど負担は増加します。

また、当月の住宅ローン分をキャッシングで返済したとしても、払えなかった1月分の住宅ローンを高い金利で先延ばししただけにすぎません。

半年後のボーナスを頼る

「当面の資金繰りが厳しいので、半年後のボーナスで6ヶ月分まとめて返済しよう」と考える人もいるでしょう。

しかし、金融機関になんの連絡もせずに半年間滞納することはNGです。先述の通り、半年間滞納が続くと一括返済請求されるどころか競売にかけられる場合もあります。

したがって、滞納を放置することは必ず避けるべきと強く認識しておきましょう。

夜逃げする

夜逃げは、最も避けるべき行動の1つです。なぜなら、夜逃げをして督促などを免れたとしても当然ながら借金がなくなることはないからです。

住宅ローンは、銀行から借りていれば5年で時効になるので、5年経てば借金がなくなると考える人もいるでしょう。

しかし、債権者である金融機関が公示送達という手段で訴訟提起すれば、居場所がわからなくても時効中断事由に該当し、時効はその時点から10年延長されます。

利息や遅延損害金が加算され借金の額は現在より大きくなることは間違いありません。

住宅ローンが払えないときの対処法8選

ここでは、住宅ローンが払えない場合の対処法を8つ解説します。

  • 金融機関へ相談する
  • 借り換えを検討する
  • 売却を検討する
  • 任意売却する
  • 保険適用の有無を確認する
  • リバースモーゲージを利用する
  • 個人再生を利用する
  • 住宅ローン以外の支出を見直す

順番に解説していきます。

金融機関へ相談する

住宅ローンが払えなくなったときに最も優先してやるべきことは、金融機関に相談することです。

なぜなら、銀行や信用金庫は過去の事例に照らし合わせて、最適の対応策を提案してくれる可能性があるからです。

したがって、住宅ローンを払える見込みが立たなくなった時点で、できる限り早く金融機関に相談しましょう。

借り換えを検討する

借り換えを検討することで、現在の借入金利を下げて返済額を抑えることが可能です。

借り換えをシミュレーションしてみましょう。

従前 借り換え後
設定条件 3000万円借入・30年返済 3000万円借入・30年返済
金利 3% 1%
月々の返済額 126,481円 96,491円

仮に、これまでの借入金利3%が借り換えによって1%になったら、毎月の返済が29,990円少なくなります。

住宅ローンの借入金利を確かめて、金利が高すぎる場合は借り換えを検討しましょう。

売却を検討する

住宅ローンをまだ滞納しておらずマイホームの売却が可能であれば、現在の住宅ローン残高よりも高く売却することを検討しましょう。

この状態であれば、住宅ローンの一括返済が可能です。

任意売却する

住宅ローンの滞納がすでに始まっている場合は、通常の売却はできず任意売却という手段をとります。

任意売却とは、売却金額でローン残額を払いきれない場合でも売却できる方法で、住宅ローンを滞納している人が対象となります。売却しても払いきれないで残ったローン残債分について、無担保で融資することを金融機関が承認することで成り立っている仕組みです。

任意売却は競売よりも高く売却できる可能性が高いので、競売にかからないうちに金融機関に相談してみましょう。

保険適用の有無を確認する

住宅ローンを契約したときに団体信用生命保険に加入している人も多いでしょう。団体信用生命保険は、ローン名義人の死亡が確認されたらその時点でのローン残高が弁済されます。

しかし、団体信用生命保険は死亡以外に高度の障害で日常生活が困難になった場合にも適用されますし、住宅ローン返済を支援するオプションが設定されていることもあります。

再度、加入している団体信用生命保険の内容を確認してみてください。

リバースモーゲージを利用する

定年を過ぎても住宅ローンの返済に苦しんでいる人は、リバースモーゲージの利用も検討してみてください。

リバースモーゲージは、住宅ローンの返済額を減らしながら今まで通りマイホームに住み続けられる商品です。60〜80歳の高齢者向けの商品で、本人は金利分だけを支払い、残債は本人死亡後に相続人がその自宅を売却して支払います。

住宅ローンが苦しくてもマイホームを売却せずに住み続けたい人は検討してみてください。

個人再生を利用する

個人再生の住宅ローン特則とは、住宅ローン以外の借金を大幅に減額してもらう手続きのことで、最大10分の1まで減額が可能です。

本来は債務者が滞納した場合、金融機関は対象の自宅を売却して残債の返済に充てるので、債務者は自宅に住み続けられません。

ところが、債務者は個人再生手続きを行うことで、ローン返済を従来通り継続しながらマイホームの処分を免れつつ、住宅ローン以外の借金を大幅に減額できます。

自宅に住み続けたい人は金融機関に相談の上、個人再生手続きを検討してみてください。

住宅ローン以外の支出を見直す

住宅ローンの返済が厳しい状態にありながらも、まだ滞納していない状況であれば、まず住宅ローン以外の支出を見直しましょう。

削れない基本的な生活費や光熱費以外で、圧縮できる支出を可能な限り削減しましょう。

住宅ローンが払えなくなる前に相談しよう

住宅ローンが払えなくなったとき、最初にやるべきことは金融機関に相談することです。

金融機関に連絡せず滞納を続けることはNGです。債務処理に詳しい税理士やFP、信頼のおける不動産業者などに相談するのも良いでしょう。

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コラム監修者情報

木場昌也

二級建築士/ 1級施工管理技士
【現場管理】注文住宅・店舗 110棟
【販売】注文住宅 79棟

入社歴23年。8年現場監督経験を経て営業職に。
震災後は県内の品質管理、着工数の平準化を図るため工事管理職に従事。また注文住宅の安定供給、品質賞の受賞に携わる。
その後、ZEH普及、高気密・高断熱商品の開発、販売、店長職を兼任。

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