建築資材の高騰は今後いつまで続く?値上がりの原因や予算を抑える対策も
この記事では、建築資材の高騰がいつまで続くかを解説します。
2023年現在、建築資材や建築費の高騰が建築業界に大きな影響を与えています。これからマイホームを建てようと検討している人は、建築資材などの高騰がいつまで続くか不安に感じるでしょう。
本記事では、建築資材が高騰した要因やマイホームの予算を抑える対策などを詳しく解説します。マイホーム購入を検討している人や将来的にマイホームを建てたいと考えている人は、ぜひ本記事を最後までお読みください。
【この記事でわかること】
● 建築資材価格のこれまでの推移
● 建築資材が高騰している主な原因
● 建築資材に関する今後の見通し
● 建築資材の高騰の影響を抑えるための対策
建築資材価格のこれまでの推移
ここ数年の建築資材価格がどの程度上昇しているのか理解しましょう。
国土交通省が公表している建設工事費デフレーターを基に、過去50年間の建築工事費の推移を下記の表にまとめました。
年次 | 1972年 | 1982年 | 1992年 | 2002年 | 2015年 | 2022年 |
指数 | 34.6 | 75.9 | 90.1 | 87.1 | 100 | 120 |
2015年を基準として推移を見ると、1972〜2015年の43年間で3倍近く建築費が高騰していることがわかります。
しかし、1992〜2015年を見てみると10%程度の上昇に留まっており、2000年からは若干の上昇傾向です。
一方で、2015〜2022年の7年間で2割程度も建築費が高騰しており、これまでの推移を見ても、ここ数年の間に急激な価格高騰が起こっていると判断できます。
建築資材が高騰している主な原因
建築資材が高騰している要因として以下5点を挙げました。
- 円安が起きているから
- ウッドショックが起きているから
- アイアンショックが起きているから
- ロシアがウクライナ侵攻しているから
- コンテナ価格が上昇しているから
それぞれ詳しく解説します。
円安が起きているから
建築資材が高騰している要因の1つとして、円安が挙げられます。
景気の過熱化や物価高騰を要因として、2021年後半頃から欧米諸国は金利を上昇させましたが、低金利政策を継続する日本は金利を上昇させませんでした。その結果、日本と欧米の金利差が広がり、円安傾向が顕著になりました。
日本は建築資材の大部分を輸入に頼っているため、円安で資材の価格が大幅に上がりました。鉄鉱石など、全て輸入に頼っている資材は、円安の影響を大きく受けています。
ウッドショックが起きているから
ウッドショックとは、アメリカや中国で住宅の需要が一気に増加し、輸入木材の価格が急上昇した現象を指します。
アメリカや中国などの大国で住宅需要が増えた大きな要因はコロナ禍です。コロナ禍でテレワークが普及し、住宅需要の増加につながりました。
アイアンショックが起きているから
アイアンショックもウッドショックと同様に、コロナ禍でアメリカや中国などの大国において住宅需要と同時に鉄の需要が増えて発生しました。
日本は鉄に欠かせない材質である鉄鉱石などを全て輸入に頼っており、アイアンショックによる材料不足で資材価格が急騰しています。
ロシアがウクライナ侵攻しているから
2022年2月にロシアのウクライナ侵攻後にロシアへの経済制裁が発動され、ロシアとの貿易が大幅に制限されたことも、資材高騰の大きな要因の1つです。
ロシアは、全世界の木材輸出量の15%程度、天然ガス輸出量の19%程度と、それぞれトップの輸出量を持ちます。石油に関しても10%程度と第3位の輸出量でしたが、経済制裁によりロシアからの流通が止まりました。そのため、これまでロシアからこれらの資材を輸入していた国は供給不足に陥っています。
コンテナ価格が上昇しているから
アメリカや中国での住宅需要の急激な増加は、各建築資材の価格高騰だけでなく、資材を運ぶためのコンテナ不足も招きました。また、住宅需要の急増だけではなく、コロナ禍でコンテナが滞留した状態にあることも、コンテナ不足の要因です。
以上2つの理由からコンテナが大幅に不足してコンテナ価格が上昇したことに伴い、資材の急激な価格上昇を起こしているといえます。
【今後の見通し】建築資材の高騰はいつまで続く?
最近では、コロナ禍の影響も徐々に減少し、アメリカや中国での住宅需要も落ち着きを取り戻しました。ウッドショックやアイアンショックに関しては、ある程度改善される見通しです。
しかし、ロシアのウクライナ侵攻や円安などは、これまで動きに大きな変化がありません。
そのため、建築資材の高騰は若干落ち着きますが、建築資材は高い状態で推移する可能性が高いといえます。円安やウクライナ情勢に解決の目処がつくと、価格は落ち着いてくるでしょう。
建築資材の高騰の影響を抑えるための対策
建築資材の高騰の影響を抑えるための対策として、以下6点を挙げました。
- 間取り・設備に優先順位を付ける
- 水回りをまとめる
- 延床面積を減らす
- 家の形状は凹凸を減らす
- 優遇・補助金制度を活用する
- 信頼できる施工会社に依頼する
それぞれ詳しく解説します。
間取り・設備に優先順位を付ける
建築資材が高騰しているため、これまでと同じ予算では、以前なら設置できていた設備を付けられないでしょう。
予算面で十分に気を配る必要があるため、間取りや設備などに優先順位を付けることが必要です。必ず設置したい設備や間取りから、順位を付けましょう。
予算に注意しながら優先順位が高いものから設置すると、予算内で限りなく理想に近い家を目指せます。
水回りをまとめる
水回りとはキッチンや浴室、トイレなどを指します。これらの水回りがバラバラに配置されていると、予算が高くなってしまいます。
1ヶ所にまとめると配管が少なくて済むため、予算削減につながるでしょう。
延床面積を減らす
延床面積とは建物全体の広さを指します。建物が広いほど建築費用は高くなるため、延床面積を減らしてコンパクトで効率的な家にすることが、予算を削減する方法の1つです。
根本的な家全体の広さを見直し、無駄な場所がない快適な暮らしをできる広さであるか確認しましょう。
家の形状は凹凸を減らす
家の凹凸が多いと、それだけ床面積が増えて建築費が増大してしまう要因になります。また、凹凸が多い家は工期が長くなりやすく、建築費が高くなる要因になるでしょう。
家の形状から凹凸を減らしてシンプルな形状にすると、工期短縮や延床面積の減少につながり、建築費を抑制できます。
優遇・補助金制度を活用する
家の仕様や設備などによって、優遇制度や補助金制度などを活用できる場合があります。
ただ、補助金制度などは自治体によって異なる部分があります。そのため、家を建築するエリアの補助金制度などを事前に調べておくとよいでしょう。
信頼できる施工会社に依頼する
コストダウンをしたい場合でも、信頼できない施工会社に依頼してしまうと、手抜き工事をされてしまうケースがあります。特に、耐震性や耐久性の部分で手抜き工事されると、築年数が経過した後の劣化度合いが酷く、修繕工事が高額になるでしょう。
信頼できる施工会社なら、コストダウンにも理解を示してくれる上に、適切なアドバイスも期待できます。信頼できる施工会社選びは、建築コストを抑える重要なポイントの1つです。
2024年は家を買うのに適したタイミングといえるのか
先述の通り、円安やウクライナ侵攻などにおける解決の見通しが立っていないため、建築資材の価格は今後も高い水準で推移すると考えられます。このような現状では、2024年に家を買うことは「困難だ」と感じる人も少なくありません。
しかし、2024年に家を購入するのは決して悪いことばかりではありません。大きな理由の1つとして、金利の低さが挙げられます。
今後、諸外国との金利差が大きくなり円安が進むと、金利が上昇する可能性があります。金利が上がると住宅ローンなどの借入をしにくくなるため、今のうちに長期固定金利で住宅ローンを組んでいると、安いコストで資金調達が可能です。
また、働き方改革や人手不足の深刻化などが要因で、今後はこれまで以上に建築費が高騰するおそれがあります。
以上から、2024年は家を買うのに適したタイミングといえます。
建築資材の高騰がいつまで続くかの見通しは立っていない
建築資材の高騰はここ数年顕著であり、今後も見通しが不透明というのが現状です。人手不足や働き方改革などで人件費が高騰すれば、今後さらに建築資材は高騰するでしょう。
しかし、ウッドショックやアイアンショックが落ち着きを取り戻したため、現在は建築資材の高騰が少し収まっている状況です。住宅ローンの金利が今後上昇するリスクなどを踏まえると、今のうちに家の購入を検討することをおすすめします。
建築資材の高騰の影響を少なく抑えるには、信頼できる施工会社に依頼することが大切です。
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※金利や制度は2023年11月時点のものです。
コラム監修者情報
木場昌也
二級建築士/ 1級施工管理技士
【現場管理】注文住宅・店舗 110棟
【販売】注文住宅 79棟
入社歴23年。8年現場監督経験を経て営業職に。
震災後は県内の品質管理、着工数の平準化を図るため工事管理職に従事。また注文住宅の安定供給、品質賞の受賞に携わる。
その後、ZEH普及、高気密・高断熱商品の開発、販売、店長職を兼任。