メリット・デメリットで考える、住宅ローンの損しない選び方・借り方
住宅を購入した後は、長期にわたって住宅ローンを返済していきます。
人によっては毎月決まった金額を組んだ年数分しっかりと返済して行く人や、ボーナスなどが入った際に繰り上げ返済をする人もいます。
住宅ローンにはいくつかの種類が存在しており、それぞれ違った特徴を持っているのでしっかりと押さえておくのは重要です。
今回は、住宅ローンの損しない選び方や借り方について紹介していきます。
それぞれの住宅ローンのメリット、デメリットも併せてチェックして行きましょう。
住宅ローン金利って選べるの?
まず住宅ローンには、大きく分けて3つの金利タイプが存在しています。
・変動金利
・固定金利
・固定期間選択型
各金利の特徴やメリット、デメリットについては後ほど紹介していくのですが、住宅ローンを組むには上記3つの金利の中から自分で好きなタイプが選択可能です。
ここで注意して欲しいのが、全ての金融機関で3つの選択がかならずしも提示されるわけではないということ。
多くの金融機関では「変動金利」と「固定期間選択型」の取り扱いはしていますが、固定金利については取り扱いが少ないところの方が多いです。
金融機関によって選べる金利には制限がありますが、自分が利用したい金利があるなら取り扱いしている金融機関を選びましょう。
それぞれの金利はどこで借りることができるか?
住宅ローンは多くの金融機関で取り扱っているので、まずは相談をしにお近くの金利窓口まで足を運びましょう。
ただし、フラット35のようなモーゲージバンクと呼ばれる金融機関では、変動金利に関しては取り扱いがありません。
フラット35は多くの金融機関が取り扱いをしていますが、都市銀行として有名な「三菱UFJ銀行」は扱っていないので注意が必要です。
逆に固定金利を専門に扱っているので、固定金利を利用したいという場合は1つの選択肢として検討してみてください。
また、フラット35ではないものの金融機関によっては独自の固定金利を扱っているところも一定数存在しています。
必ずしもそうとは限りませんが、その場合はメリットの方が少なくて金利が高いなどのデメリットを持っている可能性も少なくありません。
もちろん場合によっては低金利で提供しているところもあるので、一概にデメリットばかりとは限らないのです。
さらには固定期間選択型も変動金利同様、フラット35のようなモーゲージバンク以外の金融機関で扱っています。
優遇金利とは?
変動金利や固定金利、さらには固定期間選択型以外にも「優遇金利」というものが存在しています。
優遇金利とは、その名の通り「優遇」される金利のこと。
原則的な住宅ローン金利である店頭金利から優遇金利分を差し引くので、支払い額を押さえることができるのが大きな特徴です。
優遇金利はほとんどの金融機関で取り扱いしているので、住宅ローンの金利を比べる際は優遇金利と比較するのが大切です。
さらに優遇金利には「全期間引き下げ」と「当初期間引き下げ」の2つが存在しており、それぞれの特徴は以下の通り。
金利タイプ |
特徴 |
全期間引き下げ |
・返済期間中は、金利の引き下げ幅が変わらない ・当初の固定期間が終わった時点で店頭金利が上がっていた場合は優遇金利も同じ幅だけ上がる |
当初期間引き下げ |
・固定期間だけ金利引き下げ幅が大きい ・期間終了後は、引き下げ幅が小さくなる |
損得の話だけで判断するのはとても難しく、固定期間が短いタイプの金利は当初期間の引き下げ幅が大きい期間が短いです。
そのため全期間引き下げの方が有利になることが多く、長い目で見た時に固定期間の長いタイプの金利は当初期間引き下げ幅が大きい期間が長くなる傾向になるといえます。
優遇される方法
優遇されるためにはいくつかの条件が存在しています。
1.給与振込口座の開設
2.ローン機能付きのカードを作成
3.ネットバンキングの利用契約
4.公共料金引き落としに設定
上記の条件全てを満たす必要はないので、複数で構いません。
口座開設をするだけでも条件に当てはまる人となるので、持っていない人は住宅ローンを申し込む段階で講座を開設しましょう。
条件をざっと見ただけでもそんなに難しいものはないので、基本的には誰でも優遇されるといえます。
ただし、利用する金融機関によっては1.5%~1.85%などといった金利の優遇幅を設けているところもあるので注意してください。
捉え方によっては、借りる人の審査結果によって優遇の度合いに差を付けるということになります。
年収が高いなどの理由から返済能力があると判断された人は、金利を大きく優遇できるというものです。
ちなみにフラット35の場合は、住宅に基準を設けています。
・バリアフリー性
・耐震性
・耐久や可変性
・省エネルギー性
上記4つの内1つでも条件を満たせば、5~10年の間で金利引き下げが受けられます。
変動金利のメリット・デメリット
これまで変動金利という言葉には触れてきましたが、具体的な特徴はまだわからないもの。
「変動金利」とは、金利が住宅ローン完済までの間変動する可能性があり、なおかつ金利
変動の影響をダイレクトに受けてしまうのが大きな特徴です。
正社員として会社にしっかりと勤めているサラリーマンなどにおすすめのタイプだといえます。
変動金利の大きなメリットとしては、やや低めに金利が設定されているということ。
金利が上がってしまう可能性はありますが、完済までに上がらなければ返済額も押さえられます。
一方でデメリットは、金利の変動によって毎月の返済額が変わってしまう可能性があるということ。
先月と返済額が違うという問題が起これば、少なからず精神的なストレスを感じやすくなります。
もちろん金利の変動幅に限度はありますが、最も市場変動の影響を受けやすい部分なので注意が必要です。
固定金利のメリット・デメリット
次に「固定金利」ですが、別名「全期間固定型」とも呼ばれています。
大きな特徴としては完済するまで金利変動は行われず、毎月決まった金額を返済していくというものです。
こちらも正社員として会社にしっかりと勤めているサラリーマンなどにおすすめのタイプだといえます。
固定金利のメリットは先ほども特徴として挙げた通り、金利変動は完済するまで行われません。
数十年もの間毎月返済していく住宅ローンなので、毎月決まった金額を支払うことから非常に精神衛生上の安定化が見込めます。
とにかく完済するまで安定した生活を送りたいという人の多くが選んでいます。
一方で固定金利のデメリットですが、安定した生活が送れる分他の金利に比べてやや高めに設定されています。
完済までのリスクは少ないものの、多めに利息を支払う必要があるのです。
非常に魅力的な金利タイプではありますが、元々返済総額を押さえる予定だったという人にはややハードルが高くなる可能性があるので注意してください。
固定期間選択型のメリット・デメリット
上記では「固定金利」、別名「全期間固定型」について紹介して来ましたが、実は固定金利と変動金利の両方が利用できるタイプがこの「固定期間選択型」です。
一定期間は固定金利で毎月返済していき、その後は変動金利で返済していくという流れになります。
実際に両方の魅力を享受できるという理由から、固定期間選択型を選択している人も少なくありません。
固定期間選択型のメリットは、固定金利以上に金利が低いということ。
もちろん一定期間内という条件付きではありますが、固定金利よりも安い金利で借りられるのは大きなメリットだといえます。
期間が終了して変動金利に移行した時点で仮に金利が下がっていた場合は、変動金利と同じで返済総額を押さえることが可能です。
2つの良いところを混ぜ合わせたのが、固定期間選択型の最大メリットです。
一方で固定期間選択型のデメリットですが、期間が終了して変動金利に移行した時点で金利が上がって場合は影響をダイレクトに受けてしまうということ。
毎月の返済額は増加し、それに比例して返済総額も増えます。
固定期間選択型を検討している人は、金利が上がってしまった時の返済プランもしっかりと考える必要があります。
金利ミックスとは?
・変動金利
・固定金利
・固定期間選択型
これまでは上記3つの中から1つに絞って住宅ローンを返済していくということを紹介してきましたが、場合によっては複数のタイプを混ぜ合わせて借りることができる場合もあります。
複数の金利タイプを混ぜ合わせものを、「金利ミックス」もしくは「ミックス返済」と呼びます。
金利ミックスの大きな特徴は、固定期間選択型のように複数のタイプから良いところだけを組み合わせられるということ。
例えばですが、仮に変動金利と固定金利でそれぞれ1,500万円ずつ借りたとして、35年ローンで当初の毎月の返済額を8万円弱とします。
この時5年後と10年後に、金利がそれぞれ1%上昇した場合以下の返済額となります。
変動金利 |
固定金利 |
計 |
||
当初5年間 |
年利 |
0.625% |
1.49% |
– |
月の返済額 |
39,772円 |
45,854円 |
85,626円 |
|
6年目以降 |
年利 |
1.625% |
1.49% |
– |
月の返済額 |
45,834円 |
45,854円 |
91,688円 |
|
11年目以降 |
年利 |
2.625% |
1.49% |
– |
月の返済額 |
51,379円 |
45,854円 |
97,233円 |
|
総返済額 |
約2,055万円 |
約1,926万円 |
約3,981万円 |
表では11年目以降に金利変動がなかった場合の概算額で、返済額の上昇が抑えられた結果
毎月の返済額は10万円に満たないということが分かりました。
近年では徐々に取り扱うようになった金融機関が増えてきたので、お近くの窓口にて相談してみてください。
返済期間は35年でないとだめなの?
結論をいうと、期間内に完済できるのであればボーナスが入ったタイミングなどで多めに返済をして期間を短くすることも可能です。
住宅ローンを35年で契約する人の多くが、毎月の返済を少しでも軽くしたいという理由がほとんどです。
期間が短くなればなるほど負担も大きくなります。
また、団体信用生命保険の加入期間中に住宅ローンを完済しなければならないという制約が存在しているのです。
団体信用生命保険に加入できる期間が80歳までなので、返済期間は借りる人の年齢によって制限が生まれる可能性があります。
多くの場合30代や40代で住宅を購入する人が多い傾向にありますが、中には50代や60代で購入する人もいます。
団体信用生命保険に加入できる期間が80歳までということで、その場合満50歳の返済期間は30年で、60歳だと20年後までに完済しなければなりません。
返済期間を短くするメリット・デメリット
返済期間を短くするメリットは、その名の通り住宅ローンを早く返すことができるという点です。
ですがその分毎月の負担額が大きくなるというのが、返済期間を短くするデメリットでもあります。
1.5%の固定金利で3,000万円を借り入れしたとして、35年ローンで返済するとしたら毎月の返済額は9万円弱となります。
ですが30年ローンで返済をしていくとなると、10万円台となり毎月の負担が大きくなるといえるのです。
期間が短くなればなるほど毎月の返済額も変わってくるということを覚えておきましょう。
さらに、1度短い期間でローンを組んでしまうと途中から長くするのが難しいとされる場合があります。
子供がいる家庭は特に注意が必要で、教育費が増えた場合に返済が苦しくなることも考えられます。
まとめ
各金利タイプのメリットやデメリットなどを紹介してきました。
毎月の負担金額を減らしたいという人や、安定した金利で資金計画を立てたいという人などさまざまです。
短い期間でできるだけ早く完済まで持って行きたいという人もいますが、一旦35年ローンで組んで毎月一定金額以上を返済していくという方法もあります。
自分に合った無理のない返済方法を選びましょう。
コラム監修者情報
木場昌也
二級建築士/ 1級施工管理技士
【現場管理】注文住宅・店舗 110棟
【販売】注文住宅 79棟
入社歴23年。8年現場監督経験を経て営業職に。
震災後は県内の品質管理、着工数の平準化を図るため工事管理職に従事。また注文住宅の安定供給、品質賞の受賞に携わる。
その後、ZEH普及、高気密・高断熱商品の開発、販売、店長職を兼任。
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